どもー!シゲルでーすっ!
このサイトは高音発声(特にミックスボイス)について色々と情報提供していますよぉ!!
記事に関しては【茂解説】と【一般説】の2種類があり、コンセプトがちょこ〜っと違います。
【一般説】この世の中に発信された様々な情報から、信憑性の高い物を集約して記事にしていただいたというパターン。【茂解説】シゲルの経験から思ったことを好き放題言いまくるといったパターン。といった感じになっております。
どちらも面白いので是非ご覧くださーい!
タイトルをご覧になって、「ミックスボイスを使わないプロ歌手がいるの!?」と驚いた読者の方もいるかもしれませんね。
高音の曲が好まれる日本では、迫力ある高音を出して凄みがある世界観を作り上げ、多くのファンの心を掴むために、ミックスボイスの技を磨き続け活躍している歌手の方々がとても大勢います。
しかし、ミックスボイスを使うことを重要視することなく、自分らしい表現を追い求め大活躍している歌手も沢山いらっしゃるんですよ。この記事では、そのようなシンガーの方々をご紹介していきます。
ただし、筆者の主観による独断と偏見によるものなので、ご了承くださいね。
ボイストレーニングを頑張っているのにイマイチ効果を実感できないという方や、新しい表現のアプローチをもっと探っていきたい方など、歌に関するお悩みを抱えている皆さんへ、大きなヒントになること間違いなし!どうぞお楽しみに。
ミックスボイスって何?仕組みやメリットは?
憧れる歌手の曲を歌えるようになりたい!とか、カラオケで大好きなあの人に褒められたい!など・・・きっかけはどうであれ歌の研究を始めてみると、『ミックスボイス』という言葉にたどり着きます。
皆さんも高木調査員と似たようなイメージをお持ちだと思いますが、そもそもミックスボイスってどんな歌唱法なのか、仕組みをサラッとご説明しましょう。
発声していても、喉が楽なままでいられる低い地声の状態をキープしたい『声帯筋』と、より高い音を出すため声帯筋の動きを変化させようとする『輪状甲状筋』のせめぎ合いを起こして発声する技術のこと。習得すればどっしりとした低音から上空へ突き抜けていく高音まで、虹色のグラデーションのように声を繋げることが出来る。
なんだかちょっと難しく感じますが、私たちの喉の中ですごいことが起きているのはお分かりいただけたでしょうか。
こちらの記事ではより詳しい解説を読むことが出来ますよ。ミックスボイスを使いこなす日本人歌手も多数ご紹介していますので、是非ご覧くださいね!
関連記事:[一般説]ミックスボイスを使う日本の歌手は誰?高音発声を調査
もちろんメリットはたくさんあります。こちらも簡単にご説明しますね。
- 地声を無理やり張り上げなくても、高音をスッと楽に発声できる
- 喉の負担が軽くなるのでスタミナが上がり、長い時間歌を楽しめる
- 音域を広げられるため、レパートリーが増える
- 歌詞が聞き取りやすくなり、聴衆にメッセージが伝わりやすい などなど
良いこと尽くしで使わない手はない・・・と言いたいところではありますが、ミックスボイスを「使わない」と選択する歌手が活躍しているのも事実。これにはどのような事情があるのか、次の章で一緒に読み解いていきましょう。
ミックスボイスを使わないのはなぜ?
前章でミックスボイスを出す体のシステムやメリットについて解説しましたが・・・
- あえて全く使っていない
- 部分的にはミックスボイスで歌うが、自分らしい表現をする上でたくさん使う必要がない
このような歌手も存在します。
なぜミックスボイスを活用しないのか、それはシンガー本人でないと真実は分かりません。そこで、ボーカリストとして音楽活動を経験した筆者が、「こんな理由じゃないかな?」といくつか推測してみましたよ。
生まれ持った体質や今後の活動のため
プロとして活動している歌手の皆さんは、特別な訓練を積んで努力を重ね続けていますし、長い時間歌い続けるライブパフォーマンスの場数を踏んでいますから、一般の人に比べればかなり強い喉を持ち合わせています。
しかし、その人自身の喉のつくりや呼吸法、身体中に声を響き渡らせる共鳴のやり方などによっては、地声に近い強めの高音を発声するのが難しい場合が少なからずあるもの。
そういった体質を抱えているからこそ、苦手なのに無理やり頑張り過ぎる発声は『いずれ大切な喉を壊してしまう』ということをよく分かっているのです。
充実した音楽活動を長く続けるために、身体を大事にいたわりながら得意な音域の中で『自分らしく・美しく』歌えるよう深く研究されています。そのおかげで、私たちは彼らの歌に心を掴まれるということなんですね。
声質の強みを活かすため
指紋がひとりひとり違うように、私たちはそれぞれに唯一無二の声を持っています。あなたは、どんな声を出していますか?
というのも実は、声は『陰』と『陽』の2つのグループに大きく分けることが出来るんです。どちらに当てはまるのか、スマホなどで録音して自身の声をチェックしてみて下さいね。お友達など誰かと一緒に確認し合っても、もちろんOK。
ちなみに、陰か陽で優劣が決まるということは断じてありません。星座や血液型のようにあくまで分類するためだけのものなので、心配しなくて大丈夫ですよ。
【陰タイプの声】
落ち着いて穏やかな声、空間に深く響く声、ある程度どっしりと低い声、しっとり湿り気のある声
【陽タイプの声】
はじけるように明るい声、空間によく通る声、若々しくハリのある声、カラっと乾いた声
このチェックを体験してもらったのには理由があります。録音機器や第三者の意見を通じて自分の声を客観的に知ることが、個性を活かすための自己分析をするきっかけになるからなんです。
人は生まれながらにして誰しも魅力的な声を持っているもの。歌手の皆さんは歌声という武器を磨きながら、さらに声色を変化させたり歌唱法を調整したりして、やっと人の心を動かすエネルギーを放つことが出来るというわけです。
この声質を使って、どうすれば伝えたいメッセージをより届けやすくなるのか。ああでもないこうでもないと研究した果てに、より自分らしく魅力ある歌を作るため「ミックスボイスを重要視しない」とあえて選択したのかもしれません。
ミックスボイスにもデメリットがある
日本では、弱々しい裏声で歌ってしまいそうになる高音でも、ミックスボイスを利用し、力強く太い芯のある発声で歌いこなす歌手が特に好まれる傾向があります。体の奥から力が湧いてくるような感動を与えてくれるシンガーが沢山いますよね。
特に分かりやすいのは男性ボーカリスト。2020年現在では、Official髭男dismの藤原聡さんやKing Gnuの井口理さん、C&KのCLIEVYさんなど、女性顔負けの高いキーもすんなり出せてしまうような歌手がますます人気を上昇させていますね。
良いこと尽くしで魔法のようとも思えるミックスボイスですが、実はデメリットも存在します。それが一部の歌手にとって「たくさん活用するにはリスクが高い」と考えられている場合も。一体どういうことなのか、詳しく見ていきましょう。
高音域は楽に出しやすくなるが、単純な一本調子になってしまうこともある。それゆえに繊細な感情の動きやニュアンスの表現が難しくなり、目指している世界観から遠のいてしまう。
ハリのある高音ってとても魅力的だし、聴いていてとてもワクワクしてきますよね。だからこそとても人気があって沢山の需要がありますし、高音域の神様のようなレジェンドシンガーも多数います。
しかし、そういった歌声を使うことが、自分の作品世界には合っていないと考えている歌手も一部存在しているのは確か。セクシーな感じにしたいとか、静かで穏やかな感じにしたいなど、歌手自身が築きたいものによっては、そんなに必要ないと判断しているのですね。
次章からはミックスボイスを使わずとも大活躍している歌手の皆さんをどんどんご紹介していきますよ。乞うご期待です!
ミックスボイスを使わない歌手:低音ボイス編
まずは理想的なチェストボイスを操り、低い歌声(ロートーンボイス)でファンの心を掴みまくっている2人の歌手から。どんな魅力があるのか早速探っていきましょう!
iri
iri(イリ)さんは1994年生まれで、神奈川県逗子市在住の女性シンガーソングライター。母親が持っていたアコースティックギターを独学でマスターし、ジャズバーでの弾き語りによるライブ活動を経て、2016年にアルバム『Groove it』でデビューしています。
ヒップホップ、ジャズ、R&B、シティポップなど様々なジャンルを融合させた高い音楽性が評価され、数々のCMソングを手掛けたり、サマーソニックなど多数の国内フェスに留まらず、フランスのフェス「ラ・マニフィック・ソサエティ」への出演も果たし、大盛況となりました。
また、世界的ファッションブランドChloeやVALENTINOのパーティーでパフォーマンスを披露したり、イギリスのアーティストであるコリーヌ・ベイリー・レイのオープニングアクトを務めるなど、あらゆる分野において注目を集める新進気鋭の存在となっているんです。
ハイレベルな歌唱力と洗練された音楽はもちろんですが、iriさんの一番のチャームポイントは、中性的でソウルフルなのにどこか寂しさやミステリアスな雰囲気も感じさせる低音域の歌声にあります。筆者は初めて彼女の曲を聴いた時、歌声のすごさに思わず飛び上がってしまいました。
ここで、一番のおすすめの曲をご紹介しますよ。
『Wonderland』
2019年3月に発売されたアルバム『Shade』に収録されている。ソニー「h.ear×WALKMAN」のCMソングに起用された名曲。とにかくカッコ良くてしびれる。
iriさんは胸に歌声を響かせるチェストボイスを使いこなし、重心を低く意識しながら発声することで、軽めのファルセット(息交じりの裏声)が引き立ち、地に足のつかないような不安定でふわふわした浮遊感を演出しています。
この曲の他にもおすすめがありますよ!調査員の二人に教えてもらいましょう。
おしゃれな街のクラブで流れていそうなサウンドは、ここ近年日本で流行っている音楽性のひとつではありますが、iriさんの歌には新しい音楽が次々に生まれては儚く消えていく、消費サイクルがすこぶる早い時代の流れにも負けない異色の輝きを感じられます。
20代半ばの彼女が年齢を重ね、あらゆる経験を積んだのちにどんな歌声になっていくのか。低音域の女性シンガーといえば、かつて山口百恵さんや中森明菜さんが活躍していましたが、iriさんは令和の新たなスターとして将来がとても有望なシンガーだと言えるでしょう。
福山雅治
次にご紹介するのは福山雅治さん。深みがある低音ボイスにとろけてしまいますね。容姿端麗で、シンガーソングライター、音楽プロデューサー、俳優、ラジオDJ、写真家などマルチな才能をこれでもかと存分に発揮し、ミュージックシーンのトップを30年に渡って走り続けています。
セクシーで包容力がある歌声に定評のある福山さんですが、若い頃は当時大人気だったハードロックミュージシャンのような超高音ボイスに憧れていて、正反対の低い声質を持っている自分は「ヒット曲を出せない」と考えていたそう。
現在の活躍ぶりを思うと、「自身の持ち味をしっかりと認めた上でそれをどうすれば十分に活かすことが出来るのか?」と発想を切り替え、長い間たくさんの研究を積み重ねていらっしゃることが伺えます。
そんな福山さんの魅力を感じる、イチオシの曲はこちら。
『零-ZERO-』
2018年に公開され大ヒットした、劇場版『名探偵コナン ゼロの執行人』の主題歌。「善」と「悪」とは何か?真の「正義」とは何か?深く考えさせられる映画の世界観を色濃く映し出している。
アコースティックギターの弾き語りから始まる、めちゃめちゃ男前なラテン調の楽曲。声の響きを胸に深く下ろし、発声を低く太く保ったまま、前にグングン伸びていくワイルドな歌唱が、哲学的な歌詞を更にカッコ良く仕上げています。
熱い盛り上がりの余韻を感じさせつつ、バシッとギターの音で締めくくられるアウトロも必聴ですよ。
福山さんが高すぎる音域をできるだけ使わず、親しみがあって口ずさみたくなるキャッチーな曲を制作するのは、「より多くの人に自分の曲を楽しみ、歌ってほしいから」という思いがあるとのこと。
福山さんがたくさんのヒット曲を次々に生み出し、新しい表現を開拓し続ける天才的な才能は、私たちを大きく包み込む頼りがい溢れる優しさが源となっているんですね。
ミックスボイスを使わない歌手:ウィスパーボイス編
ウィスパーボイスとは、やわらかな声と一緒に息を多めに吐き出す歌唱法のことを指します。ここでは清らかな美しい歌声で心を惹きつけてやまない歌手のお2人をご紹介しますよ。乞うご期待です。
阿部芙蓉美
ウィスパーボイス部門で最初にご紹介したいのは阿部芙蓉美(あべふゆみ)さん。北海道出身のシンガーソングライターです。2007年にデビューした当初はバンドサウンドが中心でしたが、だんだんと歌声が引き立つシンプルな音楽性へと進化を続けています。
現在では日本各地で弾き語りライブを行いつつ、他のアーティストへの楽曲提供や映画・CMなどのナレーション業も務めています。様々なクリエイターの方から大きな信頼を寄せられているんですね。
セクシーで大人な雰囲気のウィスパーボイスを操る阿部さん。しかし、もともと声量が少ない上に腹式呼吸を苦手とする体質のため、音楽系専門学校に通っていた頃に講義で出会った作曲家の谷本新さんからアドバイスを受け、現在の歌唱法にたどり着きました。
声の長所を伸ばし、上質な音楽を作り続ける阿部さんのオススメはこちら。
『開け放つ窓』
1stフルアルバム『ブルーズ』に収録され、ハウスメイトのCMソングとして起用された。バンド版かピアノ版の2種類あり、歌声とメロディーの美しさが際立つピアノバージョンがイチ押し。
阿部さんはできるだけ遠くに、あるいは天井をスパーンと突き抜けていく歌い方ではなく、顔の前で歌声をゆらゆらとさせて、煙のようにジワーッとゆっくり広がりを見せる発声をしています。ひと節ごとの歌い終わりで、声よりも息をかなり多く吐き出すことで儚げな印象を感じさせるよう。
筆者のエピソードをお話ししますと、『開け放つ窓』をハウスメイトのCMで初めて耳にしたとき、「何だこの美しい曲は!?」と心を鷲掴みにされ、その勢いでレコード店へ駆け込んだ思い出があります。
それまでは正直ウィスパーボイスの歌手が苦手だったのですが・・・。魔力めいた強い何かが、阿部さんの歌声には潜んでいますよ。
ここで、他のオススメ曲を教えてもらいましょう。
プロによるアドバイスによって自分の身体に合った歌唱法を見つけ出し、優しくも切ない独自の世界を作り上げた阿部芙蓉美さん。個性を活かした発声は大成功ですね。
表現に迷いのある人は自分の中だけで抱え込まず、阿部さんのように音楽をよく知る誰かに意見を求めてみると、意外なところから答えを導き出せるかもしれませんよ。
青葉市子
2番目にご紹介するのは青葉市子(あおばいちこ)さん。どこまでも澄み渡る幻想的な歌声と、17歳から独学で習得したクラシックギターの高い演奏力で、とてつもない神秘性を作り出しているシンガーソングライターです。
またまた筆者の個人的エピソードを。2010年ごろに開催された、とある音楽フェスのオープニングアクトとして披露された彼女の歌を生で聴き、雷に打たれたような衝撃でその場から動けませんでした。
その後に名だたるミュージシャンが多数出演していたのですが、今でも青葉さんのライブしか記憶に残っていません。
ではでは、青葉さんが描く小宇宙に浸れる楽曲をご紹介しましょう。
『月の丘』
2018年に発売された6thアルバム『qp』のリードトラック。青葉さん自身が実際に見たある日の夢が元となって制作された。
心が浄化されていく一曲。青葉さんは口をあまりはっきりと開閉していないのですが、口の中の空間を少し大きく広げて声の響きを生み出しています。
また、すぅーっと光が差すように伸びていく歌声は、頭の上というよりもおでこや後頭部あたりから放たれるように発声されていますよ。
青葉さんの楽曲はオリジナル・カバー関係なしに全部聴いていただきたいところなのですが、筆者が独断で厳選した曲を調査員のお二人に紹介してもらいます。
教会のように静かにそびえ立つ存在感の青葉市子さん。最近ではCMソングや舞台音楽なども数多く手掛けたり、ほとんど彼女の情報だけで構成された雑誌も出版される程あらゆる分野で注目され、ますます活躍の場を拡げています。
思い描くイメージをいつくしみ、少しずつ丁寧に紡いていく彼女は、「歌を歌うために本当に大切なことは何か?誠実になって向き合うべきものは何か?」と、忘れかけていた何かを思い出すきっかけをくれるシンガーだと言っても過言ではないでしょう。
ミックスボイスを使わない歌手:地声と裏声の名人編
ここでは、ミックスボイスをあまり活用せず、地声と裏声(息漏れの多いファルセット)を理想的に操作することで世界観を築いている2人のシンガーをご紹介しますよ。あえて声質のコントラストを作り出し、曲の印象を強める演出が巧みな方々です。
YONCE(Suchmos)
まずはネオソウルやヒップホップ、アシッドジャズなどのジャンルを融合し、和製ジャミロクワイとも言われるバンド、Suchmos(サチモス)のボーカルYONCE(ヨンス)さん。
神奈川県出身で、幼少期からバレエ音楽、R&B、ガレージロックなどあらゆる音楽に影響を受けており、非常にクオリティが高くおしゃれな楽曲を制作しています。
「ボーカルはスターじゃないといけない」という価値観を持つYONCEさんの歌声を、彼が敬愛する松任谷由実さんが以下のようにコメントしていますよ。
松任谷由実はYONCEの歌声を「ハイトーンなのに膨らみのある声」「レンジ的には、普通はキンキンしちゃいそうだが、良い感じで紗がかかっている」と評価している。また、Suchmosがジャンルを横断して多様なアプローチをしつつも、いつも音の粒立ちがよくポップに聴かせることができているのは、彼の声が理由の1つだろうと述べている。
独特な空気感を持つYONCEさんの歌声を味わうならこちらをどうぞ。
『STAY TUNE』
2017年に発表されたアルバム『THE KIDS』に収録。自動車メーカーHonda「VEZEL」のCMソングとして起用され、Suchmosの知名度が一気に上昇するきっかけとなった。
YONCEさんは口の中の空間をしっかりキープし、地声は下方向へ太く響く様な発声です。歌声に少しザラっとしたような音が入っていますが、息を吐く量のバランスが良くさわやか。
そして何といっても綺麗に抜けていくファルセットが、この楽曲に表情を生み出す見事なスパイスとなっています。
YONCEさんが素晴らしいのは高い歌唱力もさることながら、地声・裏声ともに魅力的な声色を持っているところ。他のカッコ良い曲もお教えしますね。
音域の上がり下がりが少ないと、なんとなく薄っぺらく単純な歌に思えるし、実際に歌ってみても物足りなさを感じますよね。
しかし、限られた狭い音域だとしても、曲に大きな魅力を与え、感動を呼ぶ楽曲に仕上げているYONCEさんの表現力は、高音の曲はあまり歌えないけれどハイレベルな曲に挑戦したい人にとって大きなヒントになり得そうです。
森山直太朗
最後にご紹介するのは森山直太朗さん。2003年に発表された『さくら(独唱)』の大ヒットで一気に注目を集めました。森山さんは哀愁を漂わす優れた歌唱力を誇る一方で、愛嬌あふれるキャラクターが人気を呼び、俳優としても活躍されていますね。
ほとんどの楽曲を詩人の御徒町凧(おかちまちかいと)さんと共同制作しており、少しクスッと笑えるユニークなものから、人間の奥底を浮き彫りにするシリアスなものまで、きらめくようなメロディーとしなやかに美しい日本語によって、人生のあらゆる出来事が紡がれています。
森山さんの歌い方については、ミックスボイスを使うことはあるのですが使用頻度は少なくかなり部分的です。ある程度の音域までは地声で歌い、そこからはファルセットへすぐに移行する歌唱法がメインのようですね。
ここで、森山直太朗さんの凄まじい歌唱力に思う存分酔いしれる一曲をお教えしましょう。
『夏の終わり』
森山さんの3rdシングルで、カルビー「夏ポテト」のCMソングに起用された。反戦歌として歌い続けられている珠玉の名曲。
この曲は何といっても冒頭の圧倒的なファルセットの素晴らしいこと!懐かしい夏のあの日へ意識が一気に飛んでいきそう。
また、鼻から抜けていく少し高めの地声は、息の流れをコントロールすることでゆったり柔らかな声色となっています。
そしてぜひ耳を傾けていただきたいのが多彩なビブラート。浅さ・深さをかなり細かく使い分け情感たっぷりに演出していますよ。特にすごいのは2番サビ終わり。ビブラートを長く伸ばしながら少しずつすぅーっと声量を落とし、夏の風がはるか遠くへ吹き渡っていく様子を感じさせます。
もちろん他にもおすすめがございますので、ご紹介していきますね。
地声・裏声の使い分けや、ダイナミクス(音量のコントロール)、ビブラートのかけ方などをかなり細かく計算することで、人間愛に溢れた言葉に大きな力を与えて生かす稀代のシンガーである森山直太朗さん。
ものすごいスピード感で移り変わる時代の最中にいてもブレることなく、物事の本質をとらえ歌い上げる彼の姿には、歌唱法はもちろん人生や魂に根付く大切なものに気付かされますね。
まとめ
ここまで、筆者の独断と偏見に基づき『ミックスボイスを使わない歌手』について進めてまいりましたが、いかがでしたか?
歌手によってそれぞれに独自のアプローチがありましたね。「こんな歌い方があるんだ」「こうやって歌っても良いんだ」と新しい発見をされた方もいらっしゃると思います。
身体的にダメージを与えてしまうものはやがて喉を壊すことになるのでダメですが、人間みんな違ってみんな良いのですから、ミックスボイスを使っても使わなくても、自分らしく歌い、湧いてくる喜びを感じられるのであればそれでOKなんですよ。
この記事を読んで、少しでも肩の力を抜いていただけたなら幸いです。色んな歌手の歌を聴き込んだり、実際に真似しながら歌ってみたりして、可能性を豊かに広げていきましょう!
あなたの歌が喜びあふれるものになりますように。